ちょっとした鍼灸整体の話

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先日いらした患者さんとの会話です。

 「私は、他のところでも治療を受けた経験があるので、最初はすこし物足りない感じさえしました」

 「きっとそうでしょうね。当院の施術はとても穏やかで、シンプルですから」

 「それで、物足りないから効果がないではないかと、最初は疑心暗鬼でしたが、そうではなく、しっかり効果がありました、最近元気になったねとよくいわれるのですよ。」

 「例えば、鍼を刺す深さや本数で、刺激の量を加減するのですが、受けていただいてわかるように、きっとそれまで受けた他所より、パワフルでないというか、あっさりしているというか、そういう印象だったと思うのですね。だから、なんだか量が少ない感じで、効かないのではないかと不安になった。しかし、あなたのケースでは自律神経の興奮を抑えて、心身の安定を図る目的を主にしたので、極浅く、刺激量を抑えるほうが、効果を得やすかった。そして良くなったわけなのです。」

 「なんんだか意外です」

 「つまり、量ではないのです。世間ではまだ治療を量で判断する人が多い感じですね。でも、これを外科手術に例えてみてください。手術なら短い時間で、なるべく小さな傷で、結果を出せるほうが上手というわけでしょう。しかし鍼灸やマッサージは、時間が長く、たくさん何かをしてもらったほうが、得した気分になる。量が多いほうが効果があると思っている。そういう一般の方の心理はよくわかりますが、これってちょっと意識を変えていただかないと、わたしとしてはやりにくいですね。」

 「ええ、今ではよく理解しているつもりです(笑)」

鍼灸に関して言えば、様々なスタイルがあります。
現在、一番多いのは、痛みがあるころに鍼を刺してゆく方法です。
トリガーポイント療法などともよばれます。
この方法は、患者さんにとっても理解されやすい。
「ああ、痛いところだから鍼を刺しているのだな」と思う。さらに直後の即効性はあります。
欠点としては、比較的強い刺激が必要で、効果の持続性が続きにくいという点だと思います。
また、内臓機能にあたえる効果が画一的で、内科的疾患への適応力がよくないと考えられます。
日本における伝統的な鍼の特性が生かされない面があります。

私も「痛いころを強く刺激する」という方法を選択する場合もありますが、それはあまり多く用いません。
どちらかといえば、全身の経絡におけるバランスを検討して、治療すべき経絡を選択する伝統的方法を柱としています。
現在の体質や症状を東洋医学的な見地で解釈し、治療すべきツボなどを選択し、そこに極浅く鍼を打ちます。
患者さんにとってみれば、腰が悪いのに、どうして「手」などに鍼をするのかと、すこし疑問を持たれることもあるかもしれません。
しかしこの方法は、巧妙な自律神経の調整が可能で、関節などの痛みなどといった運動器系の症状のみならず、内臓の機能調整やアレルギー症状の緩和にも有効です。
また、治療直後よりも、翌々日くらいになって、治療の意味を理解するケースが多い。即効性よりも、持続的に治癒経過が起こりやすく、鍼の伝統的特性がよく生かされた方法であると考えています。

さて、整体やカイロプラクティックについてのお話です。

当院では、みなさんが想像するようなポキポキ音を鳴らすような矯正方法をほとんど用いません。
20年の経験の中で、より高度な秘術にシフトしてきたからです。

曲がっているところを反対に修正する。そんな理屈が通るのは、原因が単純なケースだけです。
体に歪みがあるという場合には、体が歪んでいるのか、何かを庇ってて歪ませているのか、あるいは、身体感覚そのものに鈍りがあり、歪みを感じられないのか、姿勢動作の癖の問題なのかなど、様々なケースがあります。
何かを庇って歪ませている場合には、単純に歪みを矯正すると、庇っている部分に痛みが発生するなど、かえって問題が出てきます。この場合には、最初にそれを治療すると、矯正しなくても自然に歪みは戻ります。
身体感覚の鈍りで歪みを歪みとして感じられない場合には、「感覚矯正」という手法を用います。

このように、矯正法は何に着目するか、経験による洞察力が必要です。
捻ったり、引っ張ったり、ポキポキ操作するだけの方法は、むしろ技術がないといえるでしょう。

このような話は、こちらのブログ から日々更新しています。
興味があれば、いちど覗いてみてください。

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